大沼君

10年ほど前、見学者が着ました。
東村山在住といいます。

志村けんを思い出しました。
その場所に憧れたこと、その場所に惹かれたことが
ある人は僕らの世代の人間なら分かるはずです。

少しして、入会しにやってきました。
近くに引っ越して着たといいます。
近くの飲食店に勤めてちょいちょい練習にやってきて、
アマチュアの大会に出るようにまでなりました。

勝ったり敗けたり、喜んだり悔しがったり、
でも、褒めて笑ってきました。
旨い飯、何度も食いました。

その後、ジムを退会して、でも、勤務地はジム近く
なのでよく見かけました。
ジムの前には踏切があります。
少し前に遮断機が切断されたジムです。

通過するときに自転車を止めてこちらの様子を伺う
場面によく遭遇しました。
手が空いていれば、目があえば手を振りました。

「田舎に帰ります」
岩手から僕のことを応援してくれていたことは会員時代
知っていました。
嬉しいですよね。
どこで誰が見ているか分かりません。
そんなことを今の人らにいっても通じないでしょうが、
そういう意味ではありません。

過去の雑誌のコピーやビデオのパッケージにサインを
頼まれました。
偉そうに記しているように感じたら僕の分筆力不足です。
一度でもその気持ちを抱いたなら、選手は皆その気持ちを
抱いてやるべきだと思うのです。

「この選手を応援してよかったな」
そう思える試合、そう思ってもらえる存在を目指すべき
なのです。
安っぽい喧嘩や、自分の仲間にだけ挨拶や手を振るのは
違うと思うのです。
第一試合だろうと、観客の記憶に自分の名を殴り書く覚悟で
リングに上がるべきなのです。
新人だろうとメインを食ってやる気持ちが必要なのです。

「今日、自分が一番いい試合してやる」
試合に出場する日、毎回思ってきました。
今も。
メインを食ってやる、それも。

気持ちを込めてサインをしました。
再来週、帰るといいます。
「なら、僕からプレゼントで、」
今週末、ジム生らのアマチュアの試合があります。
なので、来週、練習を1日プレゼントすることを告げました。
たまにはこっちに来るといいます。
いつか、岩手に足を運びたいと思います。
岩手のこと何も知りませんが、一緒に冷麺でも啜りたいなと
思います。